Webとライティングの学習帳|2月のグリズリー

webサイト制作についての勉強を備忘録的に書いています。サイトやデザインに関する書評なども掲載

『ハイ・ライズ』(J・G・バラード)など2016年7月に読んだ本

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2016年7月に読んだ本の中で印象に残っている3冊

サンリオの秘密』(辻 信太郎/扶桑社)

個人的興味から最近サンリオについて調べている。これはアニメ・映画・出版と幅広い分野に手を出していたサンリオの創業者による本。メルヘンと実業をどのように両立させていたのか個人的に疑問だったのだが一読してその一端を理解できた。

サンリオピューロランドの踊り子の露出を多くしたらお父さんたちが喜んだというサービス精神、そしてバブル崩壊後に銀行から映画産業降りろ、出版産業降りろと言われてもサンリオピューロランドを手放さなかった忍耐、ハードウェア全盛の時代に知的財産権によるコンテンツ産業を予感していた分析力、そのバランスが現在のサンリオを成り立たせていると理解できる。

会うと思想的には別として好きになってしまう人種がいる。会社の社長などはその最たるもので、サンリオは現状この初代創業者からの流れを脱却するために試行錯誤しているようだ。

 

『日本映画研究へのガイドブック』(マーク・ノーネス,アーロン・ジェロー,洞ヶ瀬真人(訳)/ゆまに書房

素晴らしい、その一言に尽きる。

日本でアーカイブ利用に関しての手続きをした人ならわかるあの面倒臭さ。日本人ですら厄介なのに本書は外国人が日本映画研究をする際にどのような資料や設備を利用したらいいのか、それをあまねく網羅して述べている。

あまねくというのは文字通り、日本映画に関しての情報源(図書館やアーカイブ古書店・文献・オンライン)を日本だけではなく世界レベルでまとめているのが他の追随を許さない。

しかも実際に利用したうえでの言葉なので個人的な述懐などが書かれており読んでいて面白い。

たとえば「早稲田大学演劇博物館」については、

閲覧室は居心地のいい場所で、基本的なレファレンスブックはすべてあるし、『キネマ旬報』『日本映画』『国際映画新聞』は全巻が通年で揃っている。知り合いに出くわすこともあるだろう。(p52)

京橋にあるフィルムセンターに関しては

外国の機関と比べてしまうと、フィルムセンターは研究者への便宜をもっと図ってくれればいいのに、と今でも思ってしまう。だがそうは言っても、当面の間は、フィルムセンターがこれまでにしてきた努力に対して感謝をするべきであろう。フィルムセンターの予算不足と人手不足はよく知られている。しかし日本にある他の機関とは異なり、フィルムセンターの研究員は極めて優秀な映画研究者で、時間があるときには多くの情報を教えてくれるし、さまざまなアドバイスをしてくれる。ここに属する研究員は、日本映画の発展に全力を尽くしているのだ。私たちはそれに対して望むのはただ一つ、日本の政府と映画産業と社会が一丸となって、映画研究の一層の発展のために予算を投入し、さまざまな壁をなくしてくれることのみである。(p46)

 

 

『ハイ・ライズ』(J・G・バラード, 村上 博基[訳]/創元SF文庫)

『バーナード嬢曰く』の2巻で紹介されていて、読んでみたいと思っていたものの長らく絶版だったJ・G・バラードの小説。

8月6日の映画公開にあわせて復刊された。万歳

ストーリーを簡単に紹介すると、

なかば外から隔絶された高層マンションに住む金持つ人々の間で軋轢が生まれ、ついには暴動がおこるという。高層マンション版ファイト・クラブである

個々の心情や理性から暴動がおこるのではなく、上と下、そして階層という場所によって不和が生じ始める描き方が見事。また徐々に荒廃していくマンション内の描写も素晴らしいのでトム・ヒドルトン主演の映画はどのような映像となっているのか気になっている。


映画『ハイ・ライズ』日本版オリジナル予告編

 

けれど異常な状況でありながら乾いた筆致で世界を見つめるバラードの文体が呼び起こす感情を映画で表現するのは難しいとも思う。

だってこの本の始まりはこんな感じに素晴らしいからだ。

 

あとになってバルコニーにすわって犬を食いながらドクター・ラングは過去3か月間にこの巨大なマンションのなかで起こった異常な事件のかずかずを思い返してみた。すべてが常態にもどったいま、そういえばこれはといった発端があったわけではなくある点からさき自分たちの生活があきらかに異常な状況にはいったという、そんな時点があったわけでもないのが、思えば意外だった。

 

 その他7月に読んだ本

  • 『SNOOPY COMIC ALL COLOR 70's』(角川文庫)
  • 『ウェブデザインの新しい教科書』(こもりまさあき、赤間 公太郎/MdN)
  • 『21世紀を生き延びるためのドキュメンタリー』(キネマ旬報社
  • 絵物語』(ディーノ・ブッツァーティ/東宣出版)
  • 『その症状は天気のせいかもしれません』(福永 篤志/医道の日本社
  • 『図解すぐできる! 自律神経失調症の治し方』(福永 伴子/ナツメ社)
  • Yahoo!ショッピング 出店&運営 成功するコレだけ! 技』(齋藤 竹紘/技術評論社
  • 『カラー版書物史への扉』(宮下 志朗/岩波書店
  • PIXAR展図録』
  • 『子供は40000回質問する』(イアン・レズリー,須川綾子[訳]/光文社)
  • 『下水道映画を探検する』(忠田 友幸/星海社新書)
  • サンリオSF文庫総解説』(本の雑誌社
  • 『麻婆豆腐大全』(麻婆豆腐研究会)
  • 『魅せる日本語のレイアウト 漢字・ひらがな・カタカナをデザインする』
  • 『美しい欧文フォントの教科書』(デザインミュージアム/エクスナレッジ
  • 『東京異景散歩』(辰巳出版
  • 『ブラジルのてしごと』(小宮 華寿子/メイツ出版)
  • 『にっぽんのかわいいタイル 昭和レトロ・モザイクタイル篇』(加藤 郁美/国書刊行会
  • dancyu合本 日本酒ポップス』(プレジデント社
  • 『別冊映画秘宝 アメコミ映画完全ガイド2016 バトルガールU.S.A』(洋泉社
  • 『映画の生体解剖 vs 戦慄怪奇ファイル コワすぎ!: 映画には触れてはいけないものがある』

 

7月に読んだ本の総数24冊